ヘルムホルツの渦定理は以下の様に述べられる定理のことである。
非粘性のバロトロピー流体に保存力のみが作用している場合、以下が成立する。
Ⅰ.渦菅の強さはどの断面を取っても一定。すなわち、渦管の強さは流体の運動中に時間変化しない。
Ⅱ.渦線は保存される。すなわち、ある瞬間に渦線上にある流体粒子は、すべての後続時刻で渦線上にある。別の言い方をすれば、流体とともに渦線と渦管は移動する。
Ⅲ.渦は不生不滅。すなわち、最初に渦度を持たない流体粒子は、その後も渦度を持たないままである。
また、この定理から渦線・渦管は ① 閉じた渦輪を形成する。② 終端は物体の境界にまで達する。③ 無限遠まで伸びる。のいずれかになることも言える。
ヘルムホルツの第1定理
複数の渦線から成る渦菅の断面積を $S$ とすると、この渦菅の強さはこのように定義できる。($\B{n}$ は $S$ の法線ベクトル)
$$
\begin{split}
\int_S \B{\om}\cdot \B{n}\,\diff S
\end{split}
$$
そして、渦線・渦菅については、その定義から法線あるいは側面に対の線方向 $\B{n}_{\RM{side}}$ について、
$$
\begin{split}
\int_S \B{\om}\cdot \B{n}_{\RM{side}} = 0
\end{split}
$$
が成立する。また、渦度のソレノイダル性から $\div\,\B{\om} = 0$ が成立することに注意しよう。このとき、渦菅の2つの断面 $S_1, S_2$ で囲まれる体積 $V$ に、発散定理を適用すると、このように計算できる。
$$
\begin{split}
0 &= \iiint_V \div\, \B{\om}\,\diff V \EE
&= \iint_{S_1} \B{\om}\cdot\B{n}\,\diff S+\iint_{S_2} \B{\om}\cdot(-\B{n})\,\diff S\iint_{S_\RM{side}} \B{\om}\cdot\B{n}_{\RM{side}}\,\diff S \EE
\therefore\, \iint_{S_1} \B{\om}\cdot\B{n}\,\diff S &= \iint_{S_2} \B{\om}\cdot\B{n}\,\diff S
\end{split}
$$
これより、渦菅の強さはどの断面をとっても一定で、不変であることが示された。
ヘルムホルツの第2定理
今度は、物質曲線(=流体の運動と共に動く曲線)の流体粒子を、パラメーター $\B{\s}$ と注目している時刻 $t$ を用いて、
$$
\begin{split}
\B{X}(\B{\s},t)
\end{split}
$$
と表すとしよう。すると、同じ物質曲線の $\B{X}(\B{\s}+\diff \B{\s},t)$ にある流体粒子との間には、テイラー展開などから、
$$
\begin{split}
\B{X}(\B{\s}+\diff \B{\s},t)-\B{X}(\B{\s},t) ≈ \ff{\del \B{X}}{\del \B{\s}}\diff \B{\s}
\end{split}
$$
の関係にあると言える。右辺は、物質曲線に接する微小ベクトルとも言えるので、これを $\diff \B{l}$ と置くと、
$$
\begin{split}
\diff \B{l} \equiv \ff{\del \B{X}}{\del \B{\s}}\diff \B{\s}
\end{split}
$$
と定義できる。$\diff \B{l}$ の時間変化を追うために物質微分を実行するとこのようになる。
$$
\begin{split}
\ff{D}{D t}\diff \B{l} &= \ff{D}{D t}\left( \ff{\del \B{X}}{\del \B{\s}}\diff \B{\s} \right) \EE
&= \ff{\del}{\del t}\left( \ff{\del \B{X}}{\del \B{\s}}\diff \B{\s} \right) \EE
&= \ff{\del}{\del t}\left( \ff{\del \B{X}}{\del \B{\s}} \right) \diff \B{\s} \EE
&= \ff{\del}{\del \B{\s}}\left( \ff{\del \B{X}}{\del t} \right) \diff \B{\s} \EE
&= \ff{\del \B{u}}{\del \B{\s}} \diff \B{\s}
\end{split}
$$
技巧的にはなるが、最終行について成分表示により変形を進めていこう。まず、連鎖律と総和規約を用いて、
$$
\begin{split}
\ff{\del u_i}{\del \s} \diff \s &= \ff{\del u_i}{\del X_j}\ff{\del X_j}{\del \s} \diff \s \EE
&= \ff{\del u_i}{\del X_j}\diff l_j \EE
&= \diff l_j\ff{\del u_i}{\del X_j}
\end{split}
$$
これより、
$$
\begin{split}
\ff{D}{D t}\diff \B{l} &= (\diff \B{l}\cdot \nabla) \B{u}
\end{split} \tag{1}
$$
という関係が導ける。
次に、(1)とヘルムホルツ方程式の差を取ると、
$$
\begin{split}
\ff{D}{D t}\diff \B{l}-\ff{D}{D t}\left( \ff{\B{\om}}{\rho} \right) &= (\diff \B{l}\cdot \nabla) \B{u}-\left( \ff{\B{\om}}{\rho}\cdot \nabla \right)\B{u} \EE
\ff{D}{D t}\left( \diff \B{l}-\ff{\B{\om}}{\rho} \right) &= \left(\left( \diff \B{l}-\ff{\B{\om}}{\rho} \right)\cdot \nabla \right)\B{u}
\end{split} \tag{2}
$$
が得られる。
もし、ある時刻にて物質線と渦線が一致していたなら、
$$
\begin{split}
\diff \B{l} = \ff{\B{\om}}{\rho}
\end{split}
$$
であることが分かる。また、$\nabla \B{u}$ が連続であるなら(2)は一意の解、すなわち $\DL{\diff \B{l} = \ff{\B{\om}}{\rho}}$ を持つ。
これより、渦線あるいは渦菅は、流体と共に移動することを意味しており、ある瞬間に渦線上にある流体粒子は、すべての後続時刻で渦線上にあることが示された。
ヘルムホルツの第3定理
もう一度ヘルムホルツ方程式について考えよう。
$$
\begin{split}
\ff{D}{D t}\left( \ff{\B{\om}}{\rho} \right) &= \left( \ff{\B{\om}}{\rho}\cdot \nabla \right)\B{u}
\end{split}
$$
もし、ある流体粒子がある時刻で持つ渦度が $\B{0}$ であったなら、ヘルムホルツの方程式の右辺は $\B{0}$ となる。
したがって、その後続時刻においても恒等的に渦度は $\B{0}$ となることが言える。 つまり、渦は不生不滅であり、最初に渦度を持たない流体粒子は、その後も渦度を持たないままである。
さらに、渦度のソレノイダル性($\div \B{\om}=0$)から、渦度は発散しないことも同時に言える。もし、渦線・渦管が流体内部で終端を持つと、その終端を囲む小体積で渦度が非発散であることになり、渦度のソレノイダル性と矛盾する。したがって渦線・渦管は ① 閉じた渦輪を形成する。② 終端は物体の境界にまで達する。③ 無限遠まで伸びる。のいずれかになることが言える。
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